マブラヴを書いていたら思い出しました。
同じメーカーの過去作です。
よく考えたらこっちもふつうの美少女ゲームに強烈なNOを言った作品です。
ボーイッシュな同級生(青髪左)とお嬢様な同級生(栗色髪右)、両方に好意を寄せられたら?
という美少女ゲーム的な展開をぶっ壊していきます。
極限状態での選択肢。
それがこのメーカー(18禁ゲーム時代はage)の持ち味だと思います。
一番その持ち味が活かされた作品が君が望む永遠です!
【合わせて読みたい】
①18禁ゲームでしか語れないもの
以下君が望む永遠のネタバレと、いくつかのゲームのネタバレを含みます!
エッチな目的でやりたくて、パソコンまで自作して始めた18禁ゲームですが、そこでしか語れない物語があることをだんだんと知っていきました。
人を殺すことについて突き詰めて考えたnitro +のファントムオブインフェルノや装甲悪鬼村正。
ある意味美少女ゲームに対する強烈な反論であるさよならを教えて。
国を取るということの暗黒面まで描いたアリスソフトの鬼畜王ランスとRanceX-決戦-
1人の少女の死の影響力の大きさを描いた素晴らしき日々〜不連続存在〜
大人だけしかプレイしないという環境で、独自の進化を遂げてそこでしか語り得ない唯一無二の物語を語ろうとしているんだなぁと感じて、どっぷりハマり込んだ記憶があります。
君が望む永遠は大人向けゲームの中でも、そこでしか語りえないものを語った名作です。
②君が望む永遠が語りたかったもの
君が望む永遠が語りたかったものも、マブラヴと同じく美少女ゲームに対する強烈なNOです。
マブラヴよりも強烈なのは、それを現実にありえるシチュエーションでやったことです。
最初に言った通りにこの物語はこの2人との恋愛関係の話です。
3角関係ですね。
主人公の鳴海 孝之(なるみ たかゆき)がオレンジ色の髪のお嬢様涼宮遥(すずみやはるか)と付き合うことになって、でも友人であるボーイッシュな少女速瀬 水月(はやせ みつき)のことも気になっていて…
まぁよくある話です。
ただしこの物語をよくあるものから特別なものに変化させたのは、水月と主人公がイチャイチャしている間に、遥が事故にあっていつ目覚めるともわからない状態になったことです。
自分が遅刻したせいで、彼女がいつ目覚めるかわからなくなったら主人公はどうするのか?
そして遥が3年後に目覚めたら?
そんな話です。
大きすぎるヒロイン
このゲーム、美少女ゲームなので、たくさんのヒロインたちが出てきます。
でも圧倒的にこの2人のヒロインとの関係が大きすぎて、なんというか美少女ゲームもやりたいならこんな娘たちもいますよ的な感じになってしまいます。
あんまりにも2人との切実な関係が深すぎて…
この物語の意地の悪いところは、誰1人として悪い人間が出てこないところです。
眠り続けるヒロインも、その両親も、病院の先生たちも、もう一人のヒロインも、主人公も、その友人も…
(あ、主人公は選択肢によっては悪人になれます😁)
ただその主人公でさえも、その心情を一緒に感じて歩いてみると、ゆらいでも仕方ないよな、そりゃ迷うよと感じます。
それぞれが人としての相応のズルさはありますが、それでもまっとうで優しい人たちです。
それが主人公をさらにさいなみます。
主人公は事故にあった遥への罪悪感から、進学も就職もできなくて、ボロボロになって、遥の両親からはもう病室に来なくていいと言われて。
なんとか水月が支えてくれて立ち直って、バイトでファミレスの店員を始めて、それも板についてきて…
水月と付き合って、愛し合うようになって、思い出をつむいで行って。
その水月の方も自分がしてしまった罪悪感と主人公への愛情から水泳を諦めて、こだわりだった髪を切って。
事故で眠り続けていた遥が目覚めます。
『さぁ』
っていう話です。
お互いに出せるカードはすべてさらしています。
主人公もヒロインたち2人も、人生の全てがテーブルに捧げられています。
さぁ、あなたはどちらのヒロインを選びますか?
これがこのゲームの醍醐味です。
君が望む永遠が語りたかったものとは?
通過儀礼と取り返しのつかない罪を語り語ったのではないかなと思います。
まだ10代の頃の感性で受けた取り返しのつかない罪、そしてその大きさとその事件が後々まで与える影響力。
そんなものが描きたかったのではないかなぁっと思います。
昔の傷として深く沈めていた過去がよみがえってくる。
あのときの記憶を全部引き連れて…
だからこそこの物語は2人のヒロインとの話です。
③選択肢の重要性
君が望む永遠は18禁ゲームの中でもさらにディープなゲームです。
だからこそその選択肢によっては、その人の人生を簡単に狂わせることができます。
水月を奴隷のように従属させて壊してしまうこともできれば、遥を物理的に壊してしまうこともできます。
主人公が壊れてしまう展開も度々起こります。
2人との関係を全て投げ出して、別のヒロインと生きる選択肢を取ることもできれば、その別のヒロインを壊してヤンデレ化させて、主人公がそのヒロインに飼われるような展開もできます。
まさに大人のゲームでしか語り得ないことです。
それでも…
だからこそこの作品にはやる価値があります。
丁寧にきちんと相手のことを考えて、かわいそうだとかいう気持ちを封じこめて、断固として片方を選べば、そのヒロインとのハッピーエンドが待っています。
深く刺さったトゲはもう抜けないけれど、それを教訓にしてこれからの人生を選ぶことはできます。
君が望む永遠とは?
これぞ18禁ゲームといった作品です。
やりこんで、魂を持っていかれて、しばらくぼーっとしてしまった記憶があります。
どのエンディングも素晴らしかった。
2人以外のヒロインもとても魅力的で、それだけにとても残念です。
全部忘れて他の女性と一緒になると、事件が大きすぎて罪悪感にさいなまれます。
ただあんまりに大きすぎる事件を体験した切実すぎる人間関係よりも、新しい人間関係の方が、すんなり幸せになれるかもしれないなぁっと、35歳を過ぎた今はそう思います。
それでも20歳そこそこの私は主人公に2人のうちどっちかを選んで欲しかった。
それがたとえどんな結末になろうとしても…
どちらを選んでも傷は残ります。
それでも納得できる結末があると思います。
この物語に悪人はいない。
それが主人公をさいなみます。
だかこそこの物語には価値がある。
そんな話です。