読み終えると呆然とするしかない漫画があります。
それがデビルマンです。
デビルマンは軽い気持ちで読むと火傷します。
以下漫画デビルマンのラストまでのネタバレをふくみます!
迫力のある絵で語られる物語は、3回のどんでん返しを経て、まさかの幕引きを迎えます。
とんでもない展開です。
(しかもそこに至るまでわずか5冊という濃密さです)
人間がこんなものを生み出せるのかと感動しました。
(作者の永井豪さん曰く、どうして描けたのかわからないみたいです)
こういう作品を読むと伏線という言葉がバカらしく聞こえます。
伏線というよりも必要なのは、神を下ろすための儀式なのかもしれません。
①ダークヒーロー
②展開
③ラスト
暗黒の聖書とも呼ベるデビルマンの魅力を語っていきます!
【合わせて読みたい】
①ダークヒーロー
気弱な青年、不動明が悪魔の力を得て人の心を持った最強の悪魔人間になる。
これがデビルマンです。
途中から題材がヒーローものから『悪』についてという途方もなく深いものになります。
面白いマンガ、ワクワクする少年漫画から、何度目かの死闘を経て、物語は悪魔たちとの戦いからズレていきます。
悪とは何か、本当の悪とは…
純粋な殺戮本能で戦い続けるデーモンなのか?
デーモン以上の激しさで敵を殺すデビルマンなのか?
弱さにつけこまれて同士討ちを始める人類なのか?
1番怖いのは本当に悪魔なのか。
深淵にハマるように深みに落ちていきます。
②展開
デビルマンになった不動明の戦いは過激さを増していき、激しい戦いから人間の内面をエグるような展開になっていきます。
顔だけになって生かされた女の子を人質に取られて、デビルマンはどう戦うのか?
悪魔という存在が人間の内側に入り込んで、軍隊や警察の合間を抜けて自分達を襲ったらどうなるのか?
この暗いファンタジーを支えていた明るい恋人が、人間になぶり殺されたらデビルマンはどうなってしまうのか?
人の弱さを突きつけられるような展開が続きます。
世界規模で行われた悪魔たちの特攻攻撃で、人間が突然悪魔に変化するという恐怖の事件が起こり、隣人を信じられなくなった人間たちは中世の魔女狩りのようなものを始めます。
人間はその知恵の限りを尽くして悪魔に対抗する武器を作りあげ、その武器を使って魔女狩りをして自分達で数を減らしていきます。
そんな中で理性を一枚ずつ引きちぎるように、デビルマンの身内が殺されていきます。
デビルマンが心まで闇堕ちして人間と戦う展開も考えられました。
それでもデビルマンは人同士を殺し合わせたサタンと戦わずにはおられなかった。
悪魔に融合されても人間の心を保てたデビルマンたちを集めて、黙示録の戦いを始めます。
その中で人類はただ同士討ちで滅びるのがすごかったです。
デーモンの力と人間の強い心を持ち合わせたデビルマンたちだけが、新人類として生き残ります。
守りたい人もその先の幸せも全てを失って、不動明は戦いのための戦いを始めます。
なぜ戦うのかもう誰にも分からない結末に向かって。
鳥肌が立ちっぱなしでした。
③ラスト
黙示録の戦いは、荒野のような場所で主人公と飛鳥了(サタン)の語りで終わります。
サタンがなぜ悪魔たちの親玉になったのか。
汚らしい害虫を殺すように神が悪魔を殺して、そのことに反発してサタンが起こした戦争だったと。
神々との戦争の合間、休戦中に地上にはびこっていた人間たちに我慢ならなかったと。
でもそれは神と同じ悪魔を害虫と払うことと同じ行為だったと懺悔します。
主人公がそこで息絶えます。
上半身だけ切り取られて岩場に打ち上げられているような状態でした。
サタンと戦って敗れたのでしょう。
不動明を悪魔として迎え入れるための全てはサタンの計画でした。
その愛情が全てを壊してしまった。
殺し合わなければならないほど、入り組んだ関係になってしまった。
愛しい人を殺して、おそらくデビルマンたちも悪魔の軍勢も全滅して、1人たそがれたサタンが波打ち際の岩の上で顔を伏せて物語は終わります。
ようやくと神々の軍勢が悪魔たちを滅ぼそうと空から舞い降ります。
ただ、それはもうどうでも良いことです。
デビルマンとは?
物語とはここまで辿り着けるのかと分からせてくれた作品です。
これを読み終わった後の感情は誰とも共有できないと思っていました。
でもそれは間違いでした。
職場の先輩たちとたまたまデビルマンのことを話す機会がありました。
みんなあれが特別な物語だとわかっていました。
万人受けする作品ではないと思います。
それでも万人がどこかでそれを理解できるような気がします。
それくらい特別な作品です。
最後までネタバレしておいてなんですが、ぜひ読んで欲しいです。
私なんかの語りよりもその絵に触れてほしいです