1冊1000円近くする異様な存在感がある本です。
ウェアハウスで『なんだこれは!』と借りて読んで、何度も読んで結局全23巻購入してしまいました。
ドロヘドロの魅力はなんといってもその世界観です。
泥とクソを煮詰めたような世界です。
ファンタジーなのに、現実世界のどうしようもない不安やドロドロを語っているようにしか思えない。
女神転生シリーズのこの世界の不安を悪魔として描いた作品に連なる作品だと思います。
世界が力を持っており、それが最終的にはキャラクターとして動き出します。
題名の通りドロとヘドロが作品の命題です。
今回はそんなドロヘドロについて語って行きたいと思います!
【合わせて読みたい】
①世界観
以下ドロヘドロの若干のネタバレを含みます!
ドロヘドロの世界観は独特です。
もともとキャラクターと設定だけが決まっていたのではないかなぁっと思います。
魅力的なキャラクターがわんさかいます。
主人公の二階堂(左の女)とカイマン(蛇男)。
敵側の心(画像右の心臓の仮面)、煙(画像中央の赤い服)、能井(画像左)など個性豊かなキャラクターと能力をもった登場人物が飛び回っています
ちなみに画像の下にいるガイコツの仮面(恵比寿)と目だけを覆う仮面(藤田)もいいキャラしています。
人がばんばん死ぬ世界で警察などはなくマフィアのような有力なヤクザの集団みたいなものが治安の維持を行っています。
そんな世界なので襲われるし殺されそうになります。
魔法使いの世界と、ただの人間の世界(ホール)にわかれており。魔法使いとふつうの人は体の構造が違います(交配して子供を残すことはできるようですが)
主人公の2人(二階堂とカイマン)は人間の世界に住んでおり、そこでばんばん魔法使いたちを殺していきます。
はた目にはそんな設定がわかりにくいので、最初は二人ともただの殺人者にしか見えません。
あっさりと、こんなに殺していいのかというくらい殺します。
目的はカイマンの記憶を取り戻すためと、カイマンの頭を蛇に変えた魔法使いを探すためです。
この世界使える魔法は1人1つと決まっています。なので人を蛇に変える魔法使いを2人は探していました。
魔法使いはただの人間をモルモットのように考えており、自分の魔法をためすための道具としか見ていません。
殺しすぎると実験ができなくなるので、あんまり殺しちゃいけないなくらいにしか考えていません。
なのでまぁそんな魔法使いを逆に殺すというのは決して悪とはいいがたいのですが、自分の目的のためにあっさり殺人を許容する主人公なのでドキドキします。
殺しを悪だと思っていないからでしょうか?
とんでもない作品だと思います。
②バディ
この作品最高のバディ(二人組)がたくさんいます。
主人公のカイマンと二階堂のペアもワクワクするし、心(シン)と能井(ノイ)の殺戮ペアもドキドキします。
どっちも人殺しにしか過ぎないのに、なんでこんなに魅力的なんでしょう?
心と能井ペア
心と能井に至っては煙の敵対組織を潰すためのただのクリーナー(殺し屋)です。
なのに人殺しをしているシーンにとてもしびれます。
繊細で優しくて気さくで、なのに殺しとなると徹底的に殺す、心臓の仮面をつけた心(シン)。
悪役レスラーのような仮面をつけて、とんでもなくマッチョでなのに美女というとんでもないキャラの能井(ノイ)。
どちらも優しいです。
殺し屋なのに、殺し屋だからかもしれません。
殺す殺さない。仲間敵の簡単な二元論でしか考えないから、人に優しくなれるのかもしれません。
だけど殺し方がえげつないです。
自分の体を魔法で何度も再生させながら肉体の強さで押しつぶす能井と、凶暴な攻撃性と攻撃力を持ちながらさらに敵を生きたままバラバラにするという凶悪な魔法使いの心。
その戦いにワクワクしながら、敵として主人公たちの前に登場した時の絶望感といったらなかったです。
勝てる気がしない。
最高の絶望が味わえます。
カイマン&二階堂VS心&能井の戦いはドロヘドロにおける私のベストバウンドです。
ぜひぜひ原作で確認してみてください!
それまでの流れも含めてドロヘドロを体感できると思います。
藤田&恵比寿ペア
バディといえば藤田と恵比寿というあんまりパッとしない能力もないペアも面白いです。
(恵比寿はガイコツ、藤田は目だけを覆う長い鼻の仮面)
仲間思いの藤田。この藤田のパートナーの松村がカイマンに殺されたことから、カイマンたちと煙ファミリーに因縁ができます。
藤田は雑魚ですがずっとパートナーを殺された仇を打とうと命懸けで戦います。
弱くても勝てそうになくても立ち向かう藤田の姿が、ドロヘドロの世界ではすごく尊いです。
同時にそんな雑魚の藤田をからかいながら大切に思っている恵比寿というキーパーソンの絡みが、とても笑えてちょっぴり切なくて大好きです。
カイマン&二階堂ペア
そして忘れちゃいけないのが蛇男カイマンと二階堂の主人公ペアです。
カイマンの頭のトゲトゲが出るマスクがめちゃくちゃかっこいいです。
なぜヘビ男となるその疑問は置いておいて、カイマンは餃子をうまそうに頬張ります。
なんでヘビ男が大葉餃子を山盛り食べてビールを飲んでいるのか。
机を叩いて問いただしたくなります。
うまそうで羨ましくて幸せそうで、でも振り返ってみればあの時が最高だったってわかります。
それくらいいろいろあってたどり着いた唯一無二の2人です。
何気なく2人で餃子を食べているシーンが心に残ります。
バディ
パートナー、ペア、バディという呼び方が肝で、今回紹介したそれぞれのペアは男女の二人組ですが恋人ではないです。
ただそれぞれが恋人以上に大切にしている尊い相手だと思います。
相手を見るときの目の優しさに引き込まれます。
誰よりも大切だから傷つけたくない。だからさよならをすることもあります。
ドロヘドロのようなクソッタレの中にあって、その2人の関係は宝石のようです。
眩しくて目を細めたくなります。
③煙
ドロヘドロといえばこの人です。
あらゆるものをキノコに変える能力の持ち主。
最強の魔法使い煙(エン)さん
表紙の絵も赤いコートが決まっています!
何がすごいってその能力。
超弱そう。
なのに最強で、揺るがない力を持っている。
魔法使いの頂点に位置して、最強の悪魔血だるまとも盟友関係にある。
敵も多いが自身のクリーナー(殺し屋)を動員して皆殺しにしていく。
目的のためには手段を選ばないまさにマフィアのボス。
なのにキノコ大好きでキノコ栽培が趣味、ペットにはキクラゲと名前をつけるとか。
(画像右下の生き物です)
煙はこの世界の魔法というもの、ひいてはこの作品の雰囲気作りにかなり大きく関わっています。
こんなにヤバイ仮面つけていて、街全体をキノコに変えてしまったり、攻撃方法も応用もできて、ほぼキノコでなんでもできるのですが、それにしてもなぜキノコなのか。
最強がキノコ魔法ってまぬけな印象です。
それが3回転くらいして逆にかっこいいのが煙です。
ドロヘドロとは?
ドロヘドロとは混沌の中を泳ぐような漫画です。
他に見たこともないような独特の世界観と、沈んで浮かび上がれない泥の中のような気だるい殺伐とした空間を味わえます。
この世の汚れ全てがないまぜになったような泥の中で、現代の疲れを落とすことができるように感じます。
何よりも読むと餃子が食べたくなる作品です。
汚らしくいやらしくなまめかしくおいしい作品。
それがドロヘドロです。
全てはいまだ混沌の中…
(言ってみたかっただけです😁)
人を選ぶがおすすめの作品です。
高い本なので、マンガ喫茶やレンタルから借りてみるのがおすすめです。