久しぶりにマンガ喫茶でマンガを没頭して読みました。
以下チェーンソーマンのネタバレを含みます。
マンガ喫茶には珍しくて、外がすこし見えるところで、そこで昼から夕暮れ、夕暮れから夜にかけて没頭して読みました。
11月のあたたかい昼下がり、読書するには最高のシュチエーションでした。
チェーンソーマンは、少年ジャンプで連載されていた現代を舞台にした、悪魔と人間の戦いを描いたマンガです。
チェーンソーマンの世界観は独特で、さらりとしているようで緻密に作りこまれています。
ジャンクフードを食べ散らかすようにバンバン人が死んでいきます。
最初から主人公やその飼い犬でさえもばらばらにされてゴミ箱に捨てられます。
そこから主人公はチェーンソーマンとして奇跡の復活を遂げるわけですが、一般の登場人物はそんなことはなくただゴミのように処分されます。
そして死んだ中で特別なパーツが主人公や物語の核心に影響を与えていきます。
チェーンソーマンでのさらりと人が死んだ後の、わずかな余韻が好きです。
姫野先輩の気楽に復讐をも燃えました。
アキの死にざまにも。
そこから主人公に与えた影響の大きさについても。
主人公のデンジはかなり破天荒で、未来にもまったく期待を抱いていなかったので強いです。ジャムを塗ったパンが望む最高の幸せだったので。
それがいつの間にかだんだん野望が広がって、人としての幸せを望んでいきます。
それこそがラスボスの望みだったのですが…
主人公を含めた数人の登場人物が、武器人間という特別な武器と融合した人間です。
武器人間は悪魔と人間が合体した不死身の人間たちで、人の血を飲めば何度でも復活します。
傷つくこともかまわずに突撃したり、ビルから飛び降りたり、突き抜けたりという戦いかたが好きです。
浮遊感が半端ないです。
そこに意味はあれどそこに意味はない。
そのシーンを書くためにその物語があるような、原因と結果が逆転しているようなマンガです。
そのためか主人公のいかれぐあいも半端なくて好きです。
チェーンソーマンというダークヒーローの力ではなくて、主人公のぶっとんだ発想のほうが難問の解決に役立っているという珍しいマンガです。
もちろん魔界のヒーローチェーンソーマンの力を使える主人公だから、その力も破格なものなのですが、それ以上に主人公がいかれていて、その突き抜け具合とそれでも取れている物語の整合性が好きです。
夕暮れから夜にかけてラストの9巻、10巻、11巻の最終章をまとめて読み切りました。
チェーンソーマンの悪魔は恐れれば恐れられる悪魔ほど強いです。
なのでチェーンソーという武器への想像と恐怖でチェーンソーマンは強いのですが、ラスボスマキマのチェーンソーマンの力を減らすために人気者にする作戦を取ります。
人々に恐れられず希望の象徴のようになったチェーンソーマンは、恐怖が減ったことで力も大きく落ちます。
そして幸せな生活を与えられた主人公は兄のようなアキと妹のようなパワーをマキマによって殺されぼう然自失になります。
すべてを失って心が壊れてしまったようなデンジは、血の悪魔パワーから与えられていた血と、飼い犬ポチタによって復活します。
死んでしまったはずの妹分が与えてくれた血に残した力と、大好きな飼い犬が自分を蘇られせくれたことで、デンジはいつもの自分を取り戻し、マキマのことを冷静に分析します。
自分の大好きなこの人(マキマ)は自分のことなんて少しも見てはくれていない。だから自分の匂いや気配なんて覚えていない。
そう冷静に考えて隠れて人間の体と悪魔の体(ポチタ)を分けて奇襲をかけることにしました。
つまりはマキマがデンジのことなんて覚えていない。少しも気にしていなければこの奇襲は成功するのです。成功しても失敗しても肉体か精神にかなりのダメージが来ます。
それでもデンジは作戦を実行しました。
作戦は成功でした。
デンジはパワーが最後に残した血で作ったチェーンソーで一撃を決めます。
でも半不死のマキマを殺しきることはできなくて、とりあえずバラバラにして動きを封じ込めます。
そしてデンジが考えたのは、愛している自分をちっとも見てくれないこの人を、食べて消化して消滅させてしまおうという作戦でした。
まさにいかれてます。
さまざまなメニューで最愛の人を食べてしまうシーン、その静けさと冷蔵庫を開ける日常的な描写も含めて大好きです。
沙耶の唄を思い出す猟奇的な冷蔵庫のシーン。なのにもっとフランクに人肉が詰まったそれを気軽に開けて今日はどんなメニューで食べようか考える主人公。
そのしぐさがあまりにもフラットで日常で、くるっているとしか言いようがありません。
食べて消滅させてしまうことで呪いを解こうという流れは、ダンジョン飯にもつながる意外な解決法で、なんというか物語はそれぞれ別でも世界が繋がっているなぁっと感じさせられてそれもとても不思議な感じがしました。
この物語はなんだか途中から、空間も時間も置き去りにして、進んでいくような感じがしました。
きちんと整合性は取れているのですが、なんというかもう空間も時間を越えたところで物語が進んでいるような気がして、それを必死で意味に縛り付けている気さえしました。
抜群にうまい物語の構成です。
だからこそ、その空想の湖でぞんぶんに遊べます。
考察サイトや動画が何本もできる理由がよくわかります。
頭がよくない私からただ一つ言えることは、とても美しく破壊が描かれた物語だということです。
個人的には頭のねじをもう少しねじ切ってしまってもいいなと思いましたが、それだと少年誌に載せられないし、脈絡のないただの空想になってしまいそうです。
何度か読み直してお腹に落としたい作品だと思いました。
意味のある破壊をこれ以上なく美しく描いてくれた。
そんな作品です。