今さらですが鬼滅の刃を10巻まで読んでみました。
久しぶりに丁寧なマンガを読んだなぁっと思いました。
出てくるキャラクター全て作り込まれています。
みんなきちんともっとうを持って動いています。
そしてキャラクターがぶれない。
だから生き生き動いている。
それは敵である鬼側もそうであり、ゾンビものに近い面白さがあります。
鬼になって強力な力を持って歪んでしまった。
でも最初に欲しかったものはなんだったのか、冷静になって本当に自分に救いはなかったのか。
強力な力に飲まれて本当は自分を助けていてくれたものを壊してしまったのではないのか。
壊してしまった絆を見ないフリして、でも行動してみると結局自分が壊してしまった絆を求めていてそれが悲しくもあり愛おしくもあります。
この作品に出ている人は純粋に愛を求める人が多い気がします。
それぞれが求めている形はそれぞれ少しずつ違うんだけど、どれも愛おしくて共感できる愛の形が多いです(まれに共感できない鬼も人もいますが)
鬼は人を喰らえば喰らうほど強くなります。
そしてねじれていく。
強くなれば強くなるほど鬼は幸せになれない。
弱くても強くても幸せになれない地獄のようなものです。
まさに鬼という存在そのもののよう。
だからか鬼が主人公炭治郎に倒されるとき、どんな外道を働いた鬼でも、この主人公はそれを包み込んで罪を許してしまう。
そのときはじめて鬼が救われたような気がします。
人間側の強力な剣士『柱』たちもどこか幸せそうではありません。
背負っているものの大きさがその命を輝かせているように見えます。
そしてその責任を果たしていきます。
強さとは責任を伴うものであることをこの作品は語っているように感じました。
物語の主軸であるやさしすぎる主人公と、主人公がそれでも戦わなければならない動機(鬼になってしまった妹の禰豆子)がまた悲しくて愛おしくて、2人が信頼しあうやりとりを見ていると背中があったかくなります。
愛を強く感じる作品です。
キャラクターの一人一人、脇役の一人にいたるまで、愛があるからこの作品は名作になっているんじゃないかなと思いました。
西野亮廣さんの血の匂いのする作品を作れって話と、小手先の作品を作るなおのれの血を全てインクにせよって『男の条件』の名言を思い出しました。
血の通った血の香りのする名作です。
抱きしめたくなります。
まだ残り半分以上読んでないことにすごい喜びを感じます。
1冊1冊ていねいに読んでいきたい作品です!